2023年01月25日

名鉄6000系の46年

鐡道誌によると名鉄6000系の登場は昭和51年12月となっている。
僕が初めて名鉄を訪問したのは昭和51年3月、そしてその年のうちに二度目の訪問をしているわけで、6000系登場前夜の雰囲気も少しは味わったと言えるだろう。
名鉄6000名電山中2.jpg

名鉄6000系が名車かどうかはさておき・・
というのは当時の名鉄には刺激的なパノラマカーをはじめとしたSRシリーズ、OR系、AL系、HL系というこれまた魅力的な旧型電車がたくさん走っていて、余所者のファンとしては6000系の登場はある意味ではショックでもあったわけだ。

ついに名鉄も「普通の電車」を作るようになったかとの思いが強かったのは確かだ。
だが、当時から特に犬山線の輸送力はひっ迫していた。
6000系登場の前、ラッシュ輸送に音を上げた運輸部門の悲鳴に、3ドアALの東急中古車を大量導入するという思い切った作戦に出た。
3880系と名付けられたこの系列は、名鉄では珍しい3連であちらこちらを走り回る。
ラッシュ輸送の対応能力は名鉄社員が驚くほどであったというが、2ドアクロスシートばかりの電車の中に、いきなり3ドアロングシートの純然たる通勤電車が大量に入ったのだから当たり前だろう。
名鉄神宮前3863犬山 (2).JPG

犬山での3880系。
この世代の東急の電車は、名鉄にはない開放感があるように感じる。
名鉄犬山後2887.JPG

しかし、名鉄ファンとしては嬉しくない電車だったのも確かで、この電車に乗ると味気なく感じてしまうのは致し方のないところ。
所詮、僕は余所者のファンであり、通勤地獄を味わう地元利用者ではない。

その前にわずかながら戦時設計の3ドア車が走っていた。
当時の犬山線はこの車両を優先的にラッシュで最も混雑する列車に使っていたというから運輸部門の苦悩は推して知るべしだ。
名鉄神宮前2554.JPG

太田川における3550系の2連。
名鉄太田川3550系2.JPG

だがこの電車はデザインのアウトラインはよく、阪急にもつながる上品さを持っていて、名鉄独自デザインの通勤型車両を僕自身も待望していた部分もある。

満を持して登場した6000系。
デザインはさすがに名鉄だ。
正面は7700系のあのスマートで優しいイメージを引き継ぎ発展させていたし、側面は大型の固定窓、多分当時としては通勤電車デザインの最高峰だったのではなかろうか。
名鉄6000名電山中.jpg

名電山中駅にて。
名鉄6000名電山中旧駅.JPG

車内はなかなか独特で、小さな、バスのような固定クロスシートが並んでいた。
この座席が当時の国鉄113系などと比しても狭すぎ、なんだか中途半端感はあった。
名鉄6012車内.JPG

この電車が翌年昭和52年(1977年)鉄道友の会「ブルーリボン賞」を受賞したのには驚いた。
もっともこの年はいわば新車の不作年でもあり、特急車両などの新登場はなく、前年に阪急6300系が受賞したことを思えば、名鉄6000系は妥当な線だったのかもしれない。
この時期の車両というのは鉄道ファン的な視点から見れば、国鉄25形客車を筆頭に全国的に車両のデザインは面白みがなく、コストを下げる方向へ流れていったわけで、そう言う意味でもデザインセンスに力量を発揮した名鉄の存在感は大きい。
同じ時期に登場した車両としては阪急6000系もあるが、こちらは重厚な阪急デザインを近代化してリファインしたイメージで、同じ系列名を持つ二つの電車に、当時の時代に逆らったオリジナルなデザイン、関西と名古屋の差が感じられて面白い。
板宿阪急6111.jpg

さて、「名鉄詣で」を繰り返す僕にとって目的はやはり、SRであり、岐阜の600V線区だった。
なので、6000系に関してはわざわざそれを撮影したり、乗車したりすることは目的にはなく、いつも脇役、「ついで」の存在だったことは否めない。

犬山橋。
名鉄6000犬山橋2002.jpg

その列車の側面、これで内海まで行くのかぁ‥とがっかりさせる列車でもあった。
ロングシート化改造後だ。
名鉄6000行先表示犬山橋2002.jpg

6000系は後の一時期、ドアの上半分をグレーに塗ったことがある。
まだまだ2ドアが中心だった名鉄で、3ドアであることを明確にしたかったのだろう。
名鉄乙川6003.JPG

増備の途中で省エネの観点からクーラーの能力を落としロスナイ(熱交換型換気装置)を搭載、側面窓が開けられるようになった。
だが名鉄車両と言えば大型の固定窓、わざわざ開閉式にしたことでさらに・・僕自身の6000系への評価は下がってしまう。
昭和55年登場のシリーズだ。
名鉄犬山橋60000系2連中期車_01.JPG

しかし、今見るとこのシリーズのデザインもなかなか上品でよいと思う。
名鉄犬山橋6000系中期車.JPG

さらに正面非貫通、いわゆる鉄仮面電車へと変化する。
デザインセンスの良い名鉄としてこのデザインはちょっと首を傾げたくなった。
こちらは昭和59年からのシリーズ。
4連は制御方式を変更して6500系に変わる。
2連もやがて6800系に変更された。
名鉄犬山橋6000鉄仮面4連.JPG

太田川の駅で6500系、3400系、5000系が並んだ。
流線形の正面デザインを持つ三世代電車の競演だ。
名鉄太田川6500・3400・5000.JPG

6500系高速・・
今伊勢付近だろうか。
名鉄今伊勢6500系高速.JPG

このシリーズではクロスシートが見直された。
幅とピッチを広げ、固定式ながらゆとりがあるものになった。
名鉄6500車内クロスシート.jpg

三河線の現終点近く。
名鉄三河線6800.JPG

正面標識灯デザインが簡素化され、のちにはこの前の増備車も改造された。
名鉄6500木曽川堤.JPG

なんだか見た目が頼りなくなる変更だ。
名鉄6500犬山線2018.jpg

6000系シリーズは平成元年から大きくデザインを変更した。
いわば金魚鉢デザインの登場だ。
鉄仮面がデザインとしてはあまり良い印象を持たなかったゆえ、このデザインには好感が持てる。
側面も再び連続窓風の3連窓になった。
1204吉良吉田名鉄6800系急行.JPG

車内、クロスシートはさらに見栄えが良くなった。
この編成ではクロスシートの枕を切り裂く悪戯があり、それゆえ枕を撤去しているとのこと、ご教示いただいた。
地元ファンの方に感謝。
1204吉良吉田名鉄6800系車内.JPG

ただ、この電車が登場したころ、僕は仕事の繁忙、そして自身の名鉄への反発から名鉄に行かなくなってしまった。
なのでこの電車を見た時は3500系と区別がつかず、焦ったものだ。

こちらが本来のグレードアップされたクロスシート。
1121名鉄岐阜朝6000系後期車車内.JPG

この電車だ。
1121名鉄岐阜朝6000系後期車.JPG

このあと、名鉄6000シリーズはロングシートに移行する。
尾西線一宮・津島間は基本、2連の6800系が専属で運用されていて、田園風景の中を走る彼らの姿はなかなかいい雰囲気を持っている。
1203山崎3名鉄6800系.JPG

そして、初期型のあの狭いクロスシートは早々とロングシート化された。
名鉄6000系が「普通の」通勤電車になったわけだ。
010612中部空港名鉄6000初期型車内.JPG

ロングシート改造車でさらに大掛かりな更新工事を請けた編成もある。
0627名鉄碧南6234車内.JPG

この車両の外観だ。
0627名鉄碧南駅6034.JPG

6000系シリーズは現在、大きく数を減らしている。
三河線・蒲郡線・広見線・尾西線などのワンマン仕様車は当面は健在だろうが、本線系統では命脈が尽きる寸前なのかもしれない。
(僕自身が瀬戸線の6000系シリーズに会えなかったのは今となっては大きな心残りでもある)

なお、この系列の詳細は鉄道ピクトリアル2021年12月号に詳しく、このブログではあくまでも個人的な思いとして読んでいただければと思う。

6800系、本線上で2連×2の姿。
1003島氏永名鉄6800系2+2.JPG

金山での並び。
0106金山6000系並び.JPG

鉄道専用橋となった犬山橋にて。
名鉄6000系犬山橋.jpg

広見線にて。
1203顔戸名鉄6209.JPG

神宮前。
名鉄神宮前6000系初期車2018.jpg

河和線阿久比にて。
1208名鉄阿久比6000系初期車.JPG

6000系で復活した白帯車。
1204吉良吉田名鉄6011停車.JPG

16年にわたって増備された6000シリーズ、彼らにとっての最後の黄金期、その時代に5700系の後を受けて河和線特急に走る。
0826大江名鉄6802特急大.JPG

最後に・・蒲郡線大俯瞰を。
032710名鉄蒲郡線俯瞰6000系砂浜_01.jpg


posted by こう@電車おやじ at 19:40| Comment(4) | 名鉄の思い出 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
名鉄のことを殆ど知らない私ですが、飯野さんのブログを通して名鉄愛、そして名鉄が辿る歴史がよく分かりました。素晴らしいブログです。有難うございました。
Posted by 川端信一 at 2023年01月25日 20:17
>川端信一さん

ありがとうございます。
ワタシの記事など、地元で密着してずっとファンを続ける方から比すと全然大したことないと思います。。
Posted by こう@電車おやじ at 2023年01月27日 15:45
こんばんは。
どの鉄道会社も既視感のある車両が増えているような印象を持ちますが、乗って、駅でよく見てみれば、その会社ならではのこだわりのようなものもあるのだと感じます。
以前の名鉄は、それは個性の強い旧型車も多く走り、見ていて飽きることはなかったのではないかと思います。
パノラマカーが引退し、SR車がなくなり、岐阜の600V区間もなくなってしまった今の名鉄ですが、今の私にとってはそれでも「らしさ」の強い会社だと、訪ねるたびに感じます。
車内に120kmで走っていることが表示されたり、一部特別車の編成の美しい固定窓、ミュージックホン、どこか乗客を楽しませようとしている意思のようなものも感じるのです。
6000系は数を減らしているようですね。様々なデザイン、網羅するようにお写真を拝見できとても楽しいです。
また時代が変わり、次の世代の通勤型電車は“他と同じよう”に見えてしまうのかもしれませんが、それでも今の姿を追いたくなる魅力が、名鉄にはあるように思っています。
Posted by 風旅記 at 2023年02月22日 20:20
>風旅記さん

名鉄の場合、最新の9500系でも他者とは一味も二味も違う…それは良い面でで、ワタシがそれに気がついたのはSRが引退しようとしていた頃でした。
今ある電車を見て、改めて名鉄の良さを実感しています。
Posted by こう@電車おやじ at 2023年02月28日 20:26
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