2024年07月10日

甘木にて

甘木という街は鉄道の歴史から見れば不思議な町だ。
ここを目指して二日市、久留米、鳥栖、基山、そのほかからいくつもの鉄道が計画され、その多くが実現した。
もっとも、軽便鉄道もしくは軌道が大半で、西鉄甘木線以外は国鉄甘木線やバスの台頭によって姿を消していく。

僕がこの甘木に興味を持ったのは、西鉄の軽快車200形が走っていたからで、この車両は本来は大牟田線で高加速の普通列車用として登場したものだ。
それゆえ、気動車の設計を取り入れた小型車体に半円形5枚窓の前頭形状は、話に聞く阪神801形の九州版を思わせてくれた。
西鉄甘木線206アップ.JPG

さて、僕が九州へ頻繁に通ったのは国鉄時代の「精勤パス」が使え、しかも急行「雲仙・西海」「阿蘇・くにさき」があったころで、精勤パスでも特急に乗れば特急券が必要、急行ならそのまま追加料金などなしで乗ることができ、資金の乏しい時にはありがたかった。
14系座席車の寝苦しさに最初は閉口したが、やがてそれすら快適と思われるようになるほどに九州へ通ったものだ。

甘木には何度か通った。
いつも終点まで乗り、短尺ホイールベースの軽快な乗り心地を楽しみ、半円形電車の醸し出す独特のムードに酔いしれたものだ。
この辺りの感覚は名鉄揖斐線と似ているのかもしれない。
西鉄203甘木.jpg

そして、甘木終点近くで国鉄甘木線が並行して存在していた。
国鉄甘木線は日中は殆ど運転がなく、一日で7往復だけの路線でついでに乗ってくるという訳には行かなかった。
だが一度だけ貨物列車を見ることができた。
甘木DE101545.JPG
貨物列車の後追い。
DE10ワム貨物甘木線.jpg

西鉄甘木線独特のムード。
西鉄甘木線200形2両サイド.JPG

半円形電車を何両も繋げた編成は見ていて楽しい。
3両編成。
西鉄甘木線200形3連.JPG

4両編成もあった。
西鉄甘木線200形4両.JPG

こちらは小石原川橋梁を渡るシルエット。
やはり名鉄揖斐線510・520形と同じ空気を感じる。
西鉄甘木線200形4連シルエット.JPG

撮影ポイントは殆どが駅から歩いて数分の、川を渡った場所だ。
なぜか夏の訪問ばかりだ。
西鉄甘木線200形3連遠望.JPG

ク62を繋いだ2連、小型車ばかりの甘木線で2連では乗車定員が少ない。
西鉄甘木線62ほか2連.JPG

後に甘木線が第三セクター化され、甘木鉄道となった。
甘木鉄道は列車の運行を大幅に増やし、福岡への通勤通学に使えるように、小郡駅を西鉄小郡駅そばに移設、これが好評を呼び乗客は大幅に増えた。
第三セクター鉄道としては全国的にもトップクラスの成功例だ。
甘木鉄道レールバス2.JPG

甘木鉄道甘木駅。
国鉄設計とは思えるお洒落な駅舎だ。
甘木線甘木駅.JPG

西鉄甘木線の乗客が便利になった甘木鉄道へ転移し、西鉄が苦しくなるかと思ったがそれほどではなかったらしい。
西鉄甘木駅に停車する200形。
この頃は駅近くに大型スーパーもあった。
西鉄甘木駅213大.JPG

この頃は駅の上屋がない。
西鉄甘木駅200形停車.JPG

停車するク62、ク60形は元をただせば博多湾鉄道汽船の気動車で、車体寸法がほぼ200形と同じで、200形の連結相手として活躍していた。
西鉄甘木線62甘木.JPG

西鉄甘木線は宮の陣で西鉄小牟田線に連絡するがそのまま久留米を経て花畑まで直通する。
久留米駅での200形の様子。
賑わう駅、可愛い電車が入る。
西鉄久留米甘木線216.JPG

ク62形を先頭にした編成が久留米駅に入線。
西鉄久留米甘木線62入線.JPG

駅に停車する200形。
西鉄甘木線久留米駅200形.JPG

当時は大牟田線も随分と面白かったものだ。
2000形特急はその貫録を見せつけてくれた。
西鉄久留米2000系特急.JPG

戦後の流線形1300形も姿を見せてくれる。
西鉄久留米1300形.JPG

先だって本当に偶然から一日の福岡訪問をすることができ、甘木を再訪できた。
甘木鉄道甘木駅は健在。
0705甘木鉄道甘木駅.JPG

甘木鉄道の気動車は標準的な大きさの軽快気動車に変更されていた。
0705甘木鉄道小石原川AR305.JPG

西鉄甘木線はなかなか良いデザインの7050形になっていた。
0705西鉄甘木7557_01.JPG

通い詰めた線路が並行するあの田圃は巨大なソーラー基地となってしまい、もはやそこでの撮影はできそうになく、小石原川の土手で列車を眺めた。
橋梁も改築され、電車の下回りが写らなくなっている。
0705小石原川西鉄7050系.JPG

そこへ、西鉄電車と甘木鉄道の気動車が同時にやってきた。
0705小石原川甘木鉄道AR302西鉄7050系.JPG

活発な鉄道路線が二つもある甘木は、今は朝倉市の一部となった。
かつての朝倉郡全体で市制を施行したためだ。
西鉄甘木駅。
0705西鉄甘木駅.JPG

国鉄甘木線、貨物列車が遠ざかる・・
甘木線貨物後ろ姿.JPG

その同じ風景も随分と周囲が賑やかしくなったものだ。
0705甘木鉄道小石原川AR305後追い遠望.JPG

夏空の下を走る半円形正面を持つ電車。
西鉄甘木線208.JPG

なお至近の大刀洗にはもともと個人が資金を出して運営されていた平和記念館があり、今は町営として戦時の戦闘機、特攻機、そして映画に使われた実物大の模型、地元で亡くなられた方々の写真、詳細な記録などが展示されていて、今回そこへ案内していただくことができた。
是非、読者の方々にも訪問をお勧めしたいところだ。
posted by こう@電車おやじ at 23:12| Comment(2) | 国鉄・私鉄双方の思い出 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする