2021年02月28日

嗚呼・・知立

知立(ちりゅう)という不思議な語感、およそ日本語離れしたその感覚は、かつての僕の地元「宝殿(ほうでん)」にも通じるものがあり、今も名鉄の名古屋以南に行く際はここで必ずと言ってよいほど下車して駅ホームで撮影している。

最初に行ったときに気に入ったというのもあるが、なんだか自分を引き付けるようなものを感じるのだ。

特急や高速で名古屋から豊橋まで乗りとおすのが常だったが、ある雨の日、ここで降りてみた。
たぶん、昭和54~5年ごろか。
当時の看板列車、パノラマカー7000系だが、このころ、逆富士型行き先表示に電動方向幕がつけられている編成が出てきていた。
当時の最新車両なのだろう。
名鉄7000後期型特急知立.JPG

雨の中、知立は多くの乗降客で賑わう喧騒だ。
パノラマカー7500系に乗り込む乗客。
時代を先取りしすぎたこのサイドのデザイン、名鉄の真骨頂ではなかろうか。
一般乗客を高品質な車両が迎える。
知立7000乗車風景.jpg

7500系の運転台。
名鉄7500運転台知立.JPG

乗り込む乗務員、たぶん、名鉄のこの運転台は国鉄では絶対に組合が受け入れなかったろうなと、当時でも思ったものだ。
二階レベルの運転台は国鉄が先駆ではあるけれど、国鉄は乗客の前面展望など考えもしなかった。
知立駅乗務員.jpg
実際に、僕が中京競馬場の保存車で乗り込んでみると、乗りにくいのは間違いがないがそれは慣れだろう、中は広々していて乗用車の運転席にいるような感覚だった。

当時はまだまだ旧型車、AL.、HLの全盛期ともいえる時代で、普通電車の大半はそういう車両だった
だが、急行森上行はAL3850系ク2860だ。
知立2860急行森上.jpg

その後ろだろうか、モ802の急行。
名鉄802知立.jpg

こちらも碧南行き急行、当時の名鉄では珍しい3ドア、3550系モ3552だ。
知立3552急行碧南.jpg

AL3850系ク3859を先頭にした本線普通電車。
知立3859普通岡崎.jpg

三河線ホームにはHL3700系列が二本並ぶ。
ク2742、ク2707だ。
知立2742・2707.jpg

高速・豊川の看板を付けて5000系が入線してきた。
豊川稲荷行高速。
5000系は丸っこい、独特のデザインで、栄光のSR最初のシリーズだ。
知立5000高速豊川東方.jpg

その電車の後ろ側、行先表示が豊川稲荷になっている。
前面窓もやや異なる。
名鉄5000知立.jpg

5200系、5000系の改良・増結用に登場した形式だ。
昭和32年製造で、パノラマミックウィンドウや2連下降窓は国鉄の車両づくりに多大な影響を与えたといわれている。
未更新、ほぼ原型を保つ編成が来た。
名鉄知立5200未更新.JPG

その編成の後ろ側「高速美合行」懐かしい種別だ。
名鉄5200原型知立後追い.JPG

5200系は当時、更新工事の途中で、側窓を二段化した車両もあった。
この下降窓→二段窓への改造工事も国鉄サロ・キロの更新に多大な影響を与えた。
高速岐阜行・・新岐阜と書かず、岐阜と書くのが名鉄流。
中間に5000系中間車を連結しているので車体断面が異なる。
名鉄知立5200更新.JPG

7300系、パノラマカーの車体を持ったつりかけ車という不思議な存在。
支線特急増発に大いに活躍した。
普通・岡崎・・・もちろん、行き先は東岡崎だ。
名鉄7300知立.JPG

新しい時代も少しずつ見えてきた。
6000系の今見れば美しい車体デザインだが、当時はファンとしては避けたい電車だった。
名鉄6000サイド知立.JPG

さらに100系なる4ドアロングシート車も登場する。
ただしこの電車は地下鉄と乗り入れをする豊田新線用の車両で、このころ、三河線で新車の足慣らしを行っていた。
この直後に三河線急行は廃止される。
名鉄100系知立.jpg

行き先板を「豊田市」とした急行100系。
ふっとみると、今、犬山から地下鉄経由で豊田市へ急行があってもおかしくない気がする。
名鉄100系急行知立.JPG

三河線急行、普段はこんな雰囲気だ。
知立駅の構内飲食店も懐かしい…きしめんやそばを扱っていたが、酒類もつまみもあった。
自分もこういうところで飲んだり食ったりしたものだ。
名鉄にくると駅のホームで一杯やれる・・のもまた特徴で、麺類の汁の香りが漂うと、いそいそと店ののれんをくぐる・・
名鉄2738急行知立.JPG

そういえば、駅で呑みすぎて・・特急に乗って小用がしたくなり、やむなく途中で降りてトイレだけ済ませて、次の特急に乗って車掌さんに事情を説明したら「ああ、いいですよ~~」と言ってもらったことも。。
今の名鉄、ほとんど構内やホームに飲食スタンドらしきものがない・・金山と名鉄名古屋くらいだろうか。。

カラーで・・
7000系パノラマカー、白帯だが急行だ。
すでに本邦有数の名車の凋落は始まっていた。
名鉄知立7000系白帯特急カラー.JPG

ホームで待つ沢山の乗客が反対方向の特急を見ている。
名鉄知立7000系特急カラー.JPG

7700系西尾線特急。
名鉄7700白帯西尾線特急知立.JPG

時代は移り、僕は写真の仕事に入ったことで特にその後半は多忙と経済的苦境でなかなか名鉄に行くことが出来なくなっていった。
それは名鉄詣でをしなくなった外的要因だが、それでも、北近畿方面や四国、岡山などには出かけていたから、やはりそこに僕の中での名鉄への失望があるのかもしれない。

パノラマカーが優等列車の主力を追われ、好きな岐阜地区の路線も一部廃止が始まっていた。
だがあるとき、どうしても名鉄に乗りたくなって無理をして出かけた。
現地で泊まることなどできず、青春18きっぷの残りを友人に分けてもらう旅しかできなかったが、それでも僕はまた知立に降り立った。
駅の雰囲気はあの頃のままで、だがそこにくる車両がずいぶん様変わりしていた。

1200系特急の離合。
この電車が出た時は、名鉄らしいスマートな新車の登場に喜んだものだ。
名鉄1200知立2000.JPG

8800系パノラマDXによる西尾線特急。
名鉄8800知立2008.jpg

パノラマスーパー1000系、1200系を連結する姿にもまた惚れ込んだものだ。
名鉄1000知立2002.jpg

2002年と記録にはあるが‥もう少し遅い時期かもしれない。
パノラマカーを見たくて溜まらずに無理をしてきたときの写真だ。

7700系急行、白帯車、自分が乗る列車なら儲けものだと喜んだかもしれないが、都落ちの悲哀を感じた。
(この場所は鳴海とのことです。お詫びして訂正いたします)
名鉄知立7700急行2002.jpg

僕が最後に動いているパノラマカーを見たのはこれが最後だった。
白帯こそ巻いているものの、普通列車で走る姿はなんだか哀れで、涙が出た。
この時出会えたパノラマカーはこれ一度きりだ。
名鉄7039知立2002 (2).jpg

知立は今も気になる駅だ。
だが、壮大な高架工事を実施中で混雑し写真など撮っていたら邪魔だと叱られそうな雰囲気だ。
一昨年、最後のSRを追ったときに、ここで見ることが出来た5700系5705F。
1122名鉄知立5705.JPG

この日も雨で、SR5700系は静かに去っていった。
1122名鉄知立5705後追い.JPG

その日、僕の前に新世代の新型車両、9500系の試運転列車が現れた。
1122名鉄知立9304.JPG

その日は地元ファン氏がお付き合いくださっていて、二人して驚いたものだ。
僕にとって、知立でSRに代わる新型車両を見たことは、今からの名鉄の姿を垣間見せてもらったように感じたものだ。
9500系は決して悪い電車ではなく、むしろ一般のレベルから見れば十分に名鉄らしさのある、素晴らしい車両だといえるだろう。
けれど・・・

僕にはあの喧騒の中の、蕎麦の汁の香りが漂う知立駅での、雑多な電車たちが懐かしく思われてならないのだ。

posted by こう@電車おやじ at 17:27| Comment(11) | 名鉄の思い出 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年02月06日

雪と鉄道

雪とは厄介なものでもあるし、美しいものでもある。
また、怖いものでもあるし、平和な冬のイメージもある。
豪雪で生活や産業、交通が遮断される悪い面と、スキーや冬場の観光などに欠かせないものでもある。

ただ、僕は神戸市旧市街地の生まれで、大阪で小学生時代を過ごし、播州で多感なころを、そしてその後はまた神戸に戻って今に至るわけで、基本、数年に一度の気まぐれに降るとき以外は雪とは無縁だ。

そんな僕でも雪に驚愕したのは忘れもしない、昭和59年1月31日の播州地方での大雪だろう。
別府鉄道最後の営業日がまさかの大雪になったのだ。
別府鉄キハ101さようなら.JPG

この日は仕事で、職場からクルマで平時なら20分ほどのところ、普段、雪の降らない播州地方の道路は完全にマヒをしてしまい、やむなく山陽電車で別府鉄道へ向かったものだ。
土山線の最終列車。
別府鉄最終列車DDハフハフ.JPG

機関車次位のハフ7は撮りこぼしたらしく、次のコマはハフ5だ。
別府鉄最終列車ハフ5.JPG

だが、もう一両繋がっていた。
数日前からエンジン不調で動かさず展示されていたキハ2が最後尾だった。
土山線を走ることなどめったにないキハ2が土山線最終列車のシンガリを勤めたのもまた意外だった。
別府鉄最終列車キハ2.JPG

その日、別府鉄道に向かうために下車した電鉄別府駅での山陽電車、ステンレスカー2015だった。
山陽2015雪別府.JPG

滅多に雪に触れない土地柄である故、時にわざわざ雪を眺めに行くこともあった。
余部橋梁の雪景色。
余部橋梁サイド雪.jpg

幾何学的な構造が雪のよってさらに不思議な光景へと転じる。
餘部雪橋梁鋼体.jpg

雪の中、長大編成の気動車急行。
「だいせん」だろうか。
餘部雪キハ28急行6連.jpg

下から見上げた。
特急が通過する。
余部橋梁雪特急.jpg

旧型客車の普通列車が村の上空を通過する。
餘部雪客車下から.jpg

雪のホームに入ってきたのはDD51が牽引する、ローカル改造された(自分が関わった)12系客車による普通列車だ。
餘部雪DD511122.jpg

だが雪がさほど多くなくても、背景の山々に雪が残ればそれもまた美しい
特急列車が行く。
餘部雪キハ181特急.jpg

堂々とした普通列車。
餘部遠望雪DD51普通.jpg

普段よく行くポイントで雪に遭遇すると嬉しかった。
武田尾、うっすらと雪化粧という言葉がまさにぴったりの朝。
特急「まつかぜ」
武田尾キハ181まつかぜ雪.jpg

DD51が牽引する普通列車、マニとその後ろがオハフ33だ。
武田尾雪のDD51マニ50オハフ33発車.jpg

大茂山トンネルで・・
写真だけ見ると戦後すぐから昭和30年代を思わせる。
武田尾冬オハフ33.jpg

だが、50系客車の投入も始まっていた。
武田尾冬50系.jpg

好きな京阪神の私鉄で雪に会うことはごくまれだ。
だから、俄か雪程度でも嬉しい。
京阪七条にて。
3000系特急。
京阪3002雪七条.jpg

こちらは2000系。
S52京阪七条2025.JPG

阪急六甲にて駅ビル屋上から。
阪急六甲雪3000系.JPG

6000系特急が通過する。
阪急六甲雪6000系 (2).JPG

乗り入れてきている山陽電車。
山陽3008新色阪急六甲雪.JPG

僕は国鉄から写真業界に移ったが、そのうち7年ほど、学校アルバムの撮影に関わった。
冬場の北海道、僅かな隙間で撮影した札幌の路面電車。
旧塗装の331。
札幌市電n331.JPG

緑色の222。
札幌市電n222.JPG

当時の新型8511。
札幌市電8511 (2).jpg

写真業界時代は当初は忙しく、末期には経済的に苦境に立たされ、ロクに鉄道写真を撮影していない。
今の業界に来てやっと少しだけ、余裕が戻った気もする。
永原駅でのトワイライトエクスプレス。
トワイライト永原 (2).jpg

冬の高岡・魚津へ、新幹線開業で消える列車たちを見に行った。
トワイライトエクスプレス。
終点まで行きつかなかった列車だ。
トワイライトEF81114高岡.jpg

北越急行の赤い塗装がカッコよく見える、681系「はくたか」
魚津681系はくたか北越車.jpg

6連で来た475系急行型による普通列車。
急行型475系魚津6連.jpg

ここ数年、友人たちが雪の降るあたりへ連れて行ってくれることがあった。
自分ではそこまでの勇気がないので・・とても感謝している。
因美線、智頭付近にて。
スーパーはくと。
0212智頭HOT7000スーパーはくと4号.JPG

いなば。
0212智頭キハ187いなば2号.JPG

キハ47が雪を巻き上げて進む。
0212智頭キハ47×3下り.JPG

智頭急行のHOT3500による普通列車。
0212智頭HOT3500・2.JPG

播但線もまた冬場は美しい。
遠望で小さく見えても朱色のキハはしっかり存在感を出す。
0127播但1寺前キハ41.JPG

こういうシーンが見られるのは僅かな時間、ここに連れてきてくれたこと、そしてこのシーンに出会えたことに感謝だ。
0127播但4寺前キハ41.JPG

国鉄形特急のデザインの流れをくむ、キハ189「はまかぜ」
0127播但10長谷キハ189.JPG

こちらは季節臨、「カニかにはまかぜ」
0127播但3寺前キハ189かにカニ.JPG

今年、正月に休みが得られ、播但線から山陰線を少し回った。
下車して撮影するのは兵庫県内だ。
播但線で・・
「はまかぜ」
0102長谷キハ189回送後追い.JPG

山陰線柴山駅でキハの普通を。
0102柴山キハ47入線.JPG

数十年ぶりの雪の余部橋梁。
キハ47の普通列車。
0102余部橋梁キハ47上り.JPG

特急「はまかぜ」
6連で来てくれた、貫禄が漂う。
橋は変わったが背景は昔のままだ。
0102余部橋梁キハ189はまかぜ1号.JPG

所用があり、長野県小諸市に縁ができ、それは冬場も続く。
合間に撮影できた雪の平原付近。
115系の通勤列車が5連で停車する。
0113平原雪の115系5連.JPG

しなの鉄道カラーの115系2連。
0113雪の平原115系2連.JPG

湘南色115系・・
小諸は雪はめったに積もらないそうで、この日も午後には雪など消え去っていた。
0113雪の平原15系湘南色2連.JPG

結局、僕自身は雪景色へのほのかな憧れを今も抱いていると思う。

posted by こう@電車おやじ at 12:48| Comment(2) | 鉄道と社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする