パノラマカーで名を馳せた7000系、7500系と言えど通勤輸送を考慮した造りで、展望席・転換クロス・連続窓ではあってもロングシート部分もあり、吊革もついていて、天井からは中づり広告というのでは、小田急や近鉄、東武、西武、南海などの華やかな他社特急に比せばどうしても見劣りしてしまう。
特急専用車としてはすでにキハ8000はあったが、これはいわば例外的な存在で国鉄直通の観光列車、通勤輸送は考慮されていなかった。
パノラマの新時代を目指して颯爽と登場したのが、1000系パノラマスーパーだ。

時に昭和63年、国鉄が民営化され、真横の東海道本線は本数増とスピードアップ、117系の増備で大きく飛躍しようとしていた。
既に名鉄では昭和61年にJR東海の設立を見越して、新型SR、5300・5700系を出してはいたが、ここは一気に華やかさを身につけてライバルを引き離そうとしたのだろうか。
パノラマスーパー1000系は新時代の名鉄のイメージリーダーとして、中京圏の代表的な鉄道こそ名古屋鉄道=名鉄である証として、さっそうと登場したと僕は見ていた。
その少し前、昭和59年、名鉄には画期的な観光特急が登場していた。
パノラマDX、8800系で、パノラマ7000系の中間車を廃車、その機器を流用して創られた、日本初の二階前面展望室やセミコンパートメントの客室などを持った観光特急だった。
8800系の車内。

けれど、名鉄はどちらかと言うと都市間連絡鉄道で、観光需要もあるものの例えば南海の高野山、小田急の箱根、東武の日光のようなわけには行かない。

どちらかと言うと、近鉄の都市間特急のような車両が求められていたのではないだろうか。
満を持して登場した名鉄らしい特急専用車、それが1000系パノラマスーパーだったと僕は見ている。
他社観光特急に負けない華やかさ、内装のレベルも高く、パノラマスーパーが出て逆にパノラマDXが色あせて見えたのは致し方のないところだ。
しかし、僕は個人的にパノラマ7000・7500が大好きで、たとえ質素な内装であってもパノラマカーに払う特急料金は惜しくない、そういうファンだったから登場時はまともに乗らなかった。
全席指定、8連もの特急が河和線を走る。

当時から名鉄特急は「たまたま来たのが特急だから仕方なく料金を支払った」人が多いとされていた。
自由席特急に相当する「高速」なんて種別もあったし、急行も頻繁に運行され、そのほとんどがSRによる運行だったから、時間に余裕がある人は特急をやり過ごせばいいんだろうけれど、急いでいるときはそうもいかない・・
名鉄の特急料金は今も昔も他社に比すれば随分安いけれど、無理に払わされる乗客から見れば、高い安いも問題ではないのかもしれない。
切符以外の料金を取る列車が来てしまった不運と思う人もいただろう。
パノラマスーパーになって、一般席のSRとの差が大きく、乗ってしまえば満足感もあるだろうが、やはり名鉄は都市間連絡鉄道だ。
やがて、名古屋本線でパノラマスーパーに一般席のSRを連結した運転が開始、そしてその一部指定席と言うやり方は乗客に大好評を持って受け入れられた。

だが官庁からの指摘もあり、編成として一般席・特別席とした特急の営業方針の大変革が行われる。
雑多な車両を連結していた楽しませてくれた名鉄特急の短い時代は終わり、統一されたデザインで編成美を魅せるパノラマスーパーの新時代に入っていった。

支線直通特急には3連化された8800系パノラマDXも使われた。

最後に8800系に出会った時、支線の特急用途で使われていた。

支線直通用パノラマスーパーとして1600系も登場した。
パノラマ7000に対する7700のような存在だろうか。

パノラマと言うにはなんだか厳つい、でも男前の電車だ。

やがて全車特別車特急が中部空港用「μスカイ」を除き全廃され、なんとパノラマスーパーに大量の廃車が出て、その機器を再利用して通勤電車を作るという・・名鉄ファンの僕には信じられないことを見せた名鉄。
5000系を名乗るこの車両からは、かつての名鉄のステータスを感じることは全くなく、僕にとっては受け入れるのに時間がかかったが、やわらかな曲面で構成されたフロントデザインや、大人しい色合いに今では好んで撮影する車両になったのだから鉄道ファンなどと言うのは当てにできないと自分で思ってしまう。
残存するパノラマスーパー1000系は更新され、色合いは名鉄と言うより京急のそれに近くなった。
だが、嫌いではない。
新しい名鉄特急のイメージとしてとても良いデザインであるとも思う。
1600系は、2200系に合わせ3両編成のうち1両をまだまだ新しいのに廃車、残る2両を2200系一般席車である2300系と連結して走るようになった。
そして系列名は1700系になった。
だが、この姿もすでに一部廃車が出て2200系に置き換えられ、残る車両の命脈も尽きようとしているという。
(ちょっとパノラマスーパー大量廃車の頃から名鉄はあまり車両を大事にしなくなったような気がして、その点がファンとしてはとても残念だ)
それでは、パノラマスーパーの写真を眺めていきたい。
パノラマカー7000系との併結。

日本を代表する前面展望2車種の豪華な特急。

東笠松を通過する併結特急。

5300系と1000系・・
なんと、一般席車は2両のみだ。

乙川にて5300系との連結。

新鵜沼にて。
上り向きで二本並ぶ。

青空とパノラマスーパー。

木曽川堤にて1000系、後ろには1200系一般席車が繋がる。

後追い、1200系。
5700系とは異なり3ドアの車体を採用したことがラッシュにも対応でき、この電車の寿命を延ばしたように思う。

知立だろうか。

舞木付近を行くパノラマスーパー1000・1200・1800系による8連特急。
増結用1800系を後ろにつないでいる。

こちらも8連特急。
ここからは最近3年以内の写真だ。
金山に入る1800系。
1200系と6500系が並ぶ。
旧塗装の1000系。
JRの尾頭橋から眺める。
雨模様の夕刻、パノラマスーパーが走ってくる。

岐南で・・1703特急、この編成の特別車はすでに廃車になった。
最後の旧塗装車、1131F、7500系の機器を再利用した最後の編成だったが。パノラマスーパー1200系必要本数のリニューアルが終わったときに廃車になった。
名鉄岐阜へ入る1131Fの一般席側。
パノラマスーパー展望席から見た1131F。
パノラマスーパーがリニューアルされたことは、僕に少し安心感をもたらしてくれた。
塗装が変わっても走ってくれるなら何よりだ。
それに、新塗装もよく似合っていると思う。
ライバルJR311系、2200系と並ぶパノラマスーパー。
塗装変更時の新旧連結。
新塗装、1200系一般席側。
藤川にて。
名電山中、パノラマスーパーが行く。
後追い。
神宮前、2200系とパノラマスーパーの並び。

東笠松駅跡、1700系最後の春。
パノラマスーパーの雄姿。
舞木付近にて、大雨の後。
島氏永、1000形サイドビュー。
パノラマスーパーの車内。
展望室。
展望室を上り口から見る。
1200系一般席。
1700系車内。
パノラマスーパーがある限り、僕は名鉄に通い続けるだろう。
そのあと、どうなるかはもはや誰にも分らず、期待の新型パノラマが出るか、それとも2200の天下となるか・・
ともかくその時まで、せいぜい楽しんでおきたいと思う。
パノラマスーパー、どうか少しでも長く生き残ってほしいと願いつつ。