2019年10月28日

関西105系の終焉

昭和59年、国鉄は奈良・桜井・和歌山各線の電化を完成させた。
本来は新車が入るはずで、そのための予算もついたはずだが、その予算で常磐・千代田線直通用103系の置き換えが行われ、元々地下線を走っていた103系1000番台は大改造工事を施され105系となり、この三線区に投入ということになった。

奈良線105系宇治.JPG

機器類は大幅な更新が行われた105系だが、福塩、宇部・小野田各線に投入された105系は新車での投入であり、ロングシートながら3ドアのローカル線に適した車両だった。
しかし、奈良・桜井・和歌山線の105系はいわば東京のお古で・・
奈良線105系投入時地下鉄顔宇治.jpg

機器類こそ更新されたものの、車内設備は使い古した色あせた化粧板や、大量輸送を使命としていた詰込みの効く浅く高い座席といったおよそ比較的距離のある路線にふさわしくないものだった。

この三線区に走っていたのはキハ35一党を中心とした気動車で、こちらも、元々はラッシュの激しい関西本線湊町口や総武本線などに向けて製造されたもので必ずしも三線区に似合っていたとは思えないものだった。
しかも、内装はくたびれ、それが乗客の荒みにつながり、決して快適な路線ではなかった。
写真は京都駅の奈良線列車。
PICT0063.JPG

電化されても車両の雰囲気は気動車時代とさして変わらず、スピードアップこそなされたものの、必ずしも評判の良い電化開業ではなかったというのが実情だろう。
この当時の国鉄は581系改造の419系を北陸線に投入するなど、資金力のなさを感じることが多かったが、まさにこの奈良・桜井・和歌山電化はその最たるもの・・・一両の新車も入ることはなかった。
奈良線105系投入時サイド宇治.jpg

ただ、当初のクリーム地に赤帯といういでたちは案外、格好良かった。
105系然とした顔つきの先頭車改造車より、地下線出自の顔立ちである元々の先頭車は、そのデザインにホロ枠を付けたことで随分、見た目のイメージは良くなっていたように思う。
国鉄桜井駅105系.JPG

105系然とした顔立ちの改造先頭車は、サイドの4ドアとの整合性が感じられない・・
これは個人的には前年に103系でこの顔立ちを採用した九州バージョンが出ているがそちらでも同じ感覚だ。

あくまでも間に合わせ的な投入であったはずの改造105系だが、北陸線419系とともに、随分、生き永らえてしまった。
北陸線419系は2011年に廃車されたが、こちら改造105系はついに令和の時代を迎え、先ごろようやく運用が終了した。

JR西日本としても、一部車両の内外装の更新も行い、何とか美しく見せようという努力はしたようだが、元が地下線で使い古した中古車である。
どうしても限界はあろうが、その中では万葉の世界をイメージした編成だけは美しい仕上がりになっていた。
0104五条105系まほろば電車.jpg

105系は走り続けた。
奈良線では221系、103系に追われる形で運用を終了したが、桜井・和歌山線では激しい103そのものの乗り心地で長時間ゆられることも少なくなく、いわゆる「乗り鉄」には厳しい路線となっていた。
0320奈良105系春日色.jpg

景色は抜群なのに、電車はどうもよくない・・それが利用者の実感だったのではないだろうか。
同じ103系が大幅にリニューアルを施して投入された、播但。加古川線では人気があることを思うとやはり、きちんと手を入れて投入すれば、悪評もそれほどでなかったのかもしれない。
0730粉河105.jpg

僕は何度か和歌山線を乗りとおしているが、やはり覚悟の必要な路線で、ある意味開き直って乗ったものだ。
105系和歌山バージョン地下鉄顔粉河.jpg

それでもまだ、オリジナル塗装が生きていた頃はそれなりに撮る楽しさもあったのかもしれない。
105計和歌山バージョン105顔王寺.jpg

奈良線、105系が走っていた区間に221系が走る現状。
今の奈良線は221系、205系主体でごく一部に103系が残る・・サービスは大幅に改善された。
0104奈良線221系宇治.JPG

王寺で黄緑の201系と並ぶ105系。
0320王子105系・201系.jpg

塗装が青一色なった・・これも似合ってはいるが、やはりクリーム地に赤帯の姿が姿が格好良く感じる。
せめて見た目だけでも、気持ちの良いものにしておくことはできなかったのだろうか。
105系蒼和歌山.jpg

105系は一部はさらに広島地区に転出し、可部線でも使われた。
旧型国電の走っていた可部線に春日塗と言われる奈良線色・・よく似合っていた。
可部線105系春日色上八木.jpg

こちらは可部線カラー・・3ドアだ。

可部線105系3ドア可部色上八木橋梁.JPG

朱色の4ドア、宇部線カラーが可部線を走る。
可部線105系4ドア朱色上八木橋梁.JPG

和歌山線には117系もごく一部投入され、こちらは美しい青系統のオーシャンカラーで走っていた。
しかし、4連ゆえワンマン機能がないので無人駅間相互では運賃は取りこぼし、不思議な運用だった。
五条にて。
117系オーシャン五条.JPG

先ごろ、105系は地下鉄を走っていた時代よりずっと長く活躍した和歌山、桜井線から撤退した。
国鉄形引退ということで鉄道ファンの注目を集めたが、嘆き悲しんだのは鉄道ファンだけで、地元の利用客から見ればようやく新しい電車に乗れるという喜びか安堵だけだったのではないだろうか。

これで105系で残るのは当初より新車として製造された3ドアの編成のみとなり、福塩、宇部・小野田、そして紀勢本線南部での活躍ということになる。

新車227系1000番台はまだ現地ではお目にかかっていないが、先だって、地元神戸での試運転を見る機会に恵まれた。ロングシートだというが、そこは線区の実情もあるだろうし、現場の運行事情もあるだろう。

なにより窓の大きな、明るく乗り心地の良い車両はきっと地元の方々に愛されるに違いない。
227-1000試運転元町.jpg

ローカル線の経営が厳しい時代になってきたが、40年近くも使い続けた中古電車が、この新車になって和歌山線の活性化に大いに役立ち、愛されることを願うばかりだ。
posted by こう@電車おやじ at 00:38| Comment(4) | 国鉄の思い出 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする