先月11月11日、友人たちから誘っていただき、「サロンカーなにわ」貸切りの「HappyTrain白馬」なるイベント列車に乗せてもらった。
僕はここ最近の旅行の大半は青春18きっぷ利用の鈍行旅行だが、改造35年目の「サロンカーなにわ」は僕にとって数年ぶりのJR特急への乗車という意味合いもある。
最近では自分でもイベント列車のお手伝いをさせていただいたり、お誘いをいただくことが増えたが、それらはすべて私鉄であり、JRのイベント列車というのはかつて写真屋時代に頻繁に乗った修学旅行団体専用列車以来ともなる。
「白馬」と銘打ってはいても、今のご時世でJR西の列車が、IRいしかわ鉄道、あいの風とやま鉄道、えちごトキめき鉄道に乗り入れが簡単に出来るわけではなく、行き先は金沢だ。
なので旅行商品名も「サロンカーなにわで行く古都金沢の旅」なのだけれども、そこは鉄道ファンばかりの列車、行き先よりは列車に乗ることを重点に置き、金沢滞在は2時間弱となっていた。
いずれにせよ北陸本線をEF81が緑色の客車を牽引して走るのは、かの「トワイライトエクスプレス」を彷彿とさせるわけで、この列車の主催者の方々は「トワイライトエクスプレス」を愛してやまない方々だという。
集合場所の京都駅にて点呼、こういった確認作業、座席の設定、弁当の配布、車内イベントの実施などすべてを主催の方々がボランティアで行うのだから、こういう鉄道ファンもあるのかと改めて感じ入った次第だ。
さて列車は定刻に入線してきた。
乗客は鉄道ファンとその関係者、そこへこの列車を撮影しようとして集まった鉄道ファン、さらには、変わった列車を見て驚く一般の乗客の方々、京都駅は一時喧騒の中にあった。
牽引機は僅か2両しか在籍しなくなったJR西日本所属、トワイライトカラーのEF81114だ。
人々の興奮を駅員が冷静に鎮める。
かつての国鉄ではほとんど見なかった非常に美しい女性助役だ。
列車はすぐ走り出し、車内は大半の方々が何度目かを数える恒例イベントで見知った方々のようで、非常に楽しげでにぎやかだ。
少し落ち着いたころ、展望車へ行ってみた。
湖西線を快走する。
14系客車の乗り心地は素晴らしく、客車列車にありがちな発車、停車、加減速の際のショックもほとんどない。
見事な運転が続く。
友人でお誘いいただいたKさん、国鉄時代からの古い友人のOさんと並びの席にしていただき、列車を堪能する。
あっという間に敦賀に着く。
ここでは10分弱の停車時間があり、ホームに出てもよいとのこと。
買い物よりなにより、列車を眺めなくてはならない。
7号車のサイド。
今回の運用では列車の編成が逆になっていて、元々、北陸本線は大阪方が1号車だが、2015年から特急「サンダーバード」が金沢方向が1号車に改められていて、それに合わせたのだろうか。
山陽本線運用ではこちら側が上り方向になるはずだ。
向かいのホームで列車の撮影をする。
EF81114と「サロンカーなにわ」編成全景だ。
機関車と次位のスロフ14703の連結部分。
展望車スロフ14703。
2号車、オロ14706。
このクルマが高砂で取り掛かった第一号車だ。
そして僕が実際にメンバーとして作業をさせてもらったクルマで、しかも今は「お召し」に使えるように一部側窓が防弾ガラスに変更されている。
中央の車番。
懐かしさがこみあげてくる。
客車編成を後尾から。
最後尾は半室展望室のスロフ14704だ。
車体の銘板、車内銘板はすべて鷹取のものに差し替えられているが、車体には高砂が生きる。
ここで既出であるが、高砂での改造時の様子を思い返したいと思う。
オロ14の鋼体改造の様子だ。
外観は片方の出入り台を廃止して、そこに固定窓を設置しているだけで、大きく原型を崩してはいない。
展望車スロフ14703の鋼体工事。
展望室側、便所・洗面所を撤去し、そこに展望室を組み立てた。
ダクトは夏場の固定窓車の作業ゆえ、作業用の冷房装置だ。
上の写真と比すと尾灯掛けがついているのが分かる。
車掌室側の工事。
丸妻を切妻に改造した。
ライバル、大宮工場施工の「サロンエクスプレス東京」では、丸妻を残したことで、ここに車端ダンパーを付けることができず、乗り心地の面での不安が残ったが、その点はさすがに「基本に忠実」の高砂工場で、車端ダンパーも取り付け、特急列車としての乗り心地の維持を図っている。
塗装職場で全塗装が完了したオロ14706。
場内試運転の様子。
オロ14706の車内。
客室内張は淡いグレーのビニールクロス、クーラーカバーは茶色に塗装され、照明器具の金属部分は金色、荷棚には茶系のプラ製カバーが付いた。
天井右側の斜めになっている個所は暖房器具で、クーラーのように送風の向きを変えることができた。
ただし、頭の上から暖気が来るわけで、この点は当時から改善の要ありと思ったものだ。
カーテンはむき出しの住宅用カーテンレールにキセなしでぶら下がり、雰囲気を盛り上げる。
仕切ステンドグラス部分。
反対側の大型プロジェクター。
カラオケ機能付きだ。
スロフ14703の完成外観。
やや正面寄りにて。
まったく丸妻の面影がなくなった車掌室側。
スロフ14703の車内。
座席は少なく、この点では座席を工夫してたくさんの人が座れるようにした「サロンエクスプレス東京」の使い勝手に軍配が上がるかもしれない。
内張はアルミデコラを平滑に加工して、その上に住宅用の淡いグレーのビニールクロスを張り詰めた。
天井のクーラーカバーは茶色に塗装され、照明器具の金属部分は金色だ。
総じて当時の喫茶店やバーのようなイメージだった。
ビュッフェカウンター。
基本的な調理機能を持ち、列車食堂として営業できるようになっていた。
完成したスロフ14703、車番は「サロンエクスプレス東京」の続番とされた。
職員・家族・施工関係者向けの内覧会にて、まだ幼かった僕の妹二人だ。
公式完成発表会。
後ろの巨大な建屋は木工職場の製材場だ。
1983年(昭和58年)に完成し、各地で展示会が行われた。
これはその時の回送列車を加古川駅東側で撮影した写真だ。
EF651125がけん引してくる。
半室展望車のスロフ14704が次位につながる。
編成中ほど。
この時は未だ6両しか落成していなかった。
編成全景。
最後尾がスロフ14703で全室展望車だ。
走りだすと、なかなか情報のない当時とあって、「サロンカーなにわ」にまみえることは非常に少なくなった。
見たいとは思ってもいつ走るかわからないことが多かった。
たまたま、快速電車に乗っていて、向かいのホームにEF5812がけん引する「サロンカーなにわ」に出会えた時は嬉しかった。
駅は京都駅だろうか。
「サロンカーなにわ」は、その後、鷹取工場で更新工事を受けた。
外観は金帯が黄色になったくらいで変化は少なかったが、内装は大きく変化した。
網干総合車両所公開の時のスロフ14704、展望室の内部。
ビニールクロスは普通のアルミデコラに改められた。
最近はネットで情報が出回るようになり、時間が合えば近所で撮影を楽しむこともできるようになった。
国鉄色EF65による団体列車、大蔵谷駅にて。
舞子にて「サロンカーあかつき」
今の時代に奇跡的に復活した一日だけの夜汽車。
トワイライトカラーに改められたEF651124による列車、これも大蔵谷、明石の天文科学館時計塔を背景にやってくる。
朝霧方向へ去る列車。
東垂水駅にて。
明石海峡大橋の方向へ・・・
夜の垂水駅、今回のメンバーによる貸し切り列車だ。
展望車内ではじゃんけん大会が開かれていたそうだ。
余韻を残し列車は去る・・・
話を先月のイベント列車に戻そう。
金沢へ入線する帰路の列車。
スロフ14703の車内。
高砂時代の面影もかなり残っているように思う。
列車は気持ちよく北陸本線を走る。
途中、制輪子に何かを挟んだようで発煙し、安全点検が行われたが、それもクリヤして・・
客車列車というものがこれほどに乗り心地の良いものであるとは…あらためて実感する。
日の暮れた京都駅に到着。
35年ぶりの「サロンカーなにわ」への乗車はお開きとなった。
製造45年改造35年、客車ゆえ、難しい制御機器が存在せず、手入れさえ続ければまだまだ使えるとは思うが、今度は機関車が残り少なくなってしまった。
今回の機会にお誘いいただいた友人たちに深く感謝するとともに、「サロンカーなにわ」が少しでも永く、無事故で活躍してくれることを心から祈念する。