それがかつての鳴海工場を移転したものであることも知っていた。
だが、Facebook上で友人たちとのやり取りで、その場所が名電山中の近くだと言う。
迂闊なことに、僕はこの施設が鳴海か安城辺りの何処かにあるものと思い込んでしまっていたようだ。
名電山中と言えば、かつて僕が訪問した名鉄沿線でも好きな場所だった。
ただ、再訪するチャンスが得られず、36~7年も経過していたということになる。
今回、名電山中で撮影したネガの一部を見つけることができた。
一部に以前に掲載したものもあるが、それはアルバムのプリントからで、当時の記憶の喪失はようやく、ネガを見つけたことで思い出したような次第だ。
まずは昭和56年頃かと思うが、その頃の写真から。
築堤を望む山腹、たぶん、棚田の上段くらいだったと思う・・そこからのカラー写真を。
パノラマカー7500系のサイド。
よく見ると正面の種別は特急になっている。
この頃は「高速」が運行されていたから「特急」は座席指定車ばかりの編成だ。
その特急の後追い。
こちらは「高速」だろうか。
やはり7500系だ。
僕はこの、車両の下縁が一直線に改良された7500系が特に好きだった。
同じ場所を5000系の高速が行く。
そして登場したばかりの7000系白帯車による特急。
白帯特急の後追い。
パノラマカーは赤一色が格調があって好きだが、この白帯の姿もなかなか良い。
7500の高速。
5500系高速か。
また別の白帯特急。
この頃、パノラマカーは全盛期で、特に名古屋本線では片道10分に一度かそれ以上、見ることができた。
いくらでもやってくるのだ。
築堤の近くで7500系高速。
これは駅から現地に行くまでの道だろうか。
7500の急行。
その横顔をやや後ろから。
この角度のパノラマカーには上品な、生まれの良さが現れているような気がする。
これも7500の急行。
7000の白帯特急。
こちらは反対方向の後追い、7000白帯特急。
その先のカーブで編成を。
HL車の普通電車、稀にこの辺りでも見ることができた。
蒸気のカラー写真と同じ場所での7500急行。
登場してまだいくばくも経っていない6000系の急行。
当時としては「通勤タイプの電車を急行に使うなんて」と思ったものだが、デザインは良く、例えば、7700の時にこの形態の3ドア転クロを導入しておけば、SR系の寿命はもっと延びたかもしれない。
築堤を望む山腹より、7500系。
さて、3月22日、この場所にやってきた僕は、記憶が飛んでいたようで、自分が果たしてこの駅に降り立ったかどうか、確証が持てずにそれでも、かつて撮影をしたであろう辺りへと歩いてみた。
4日間続いた雨がようやく上がり、雨上がりの空に雲雀が囀るのどかな春を実感しながら、すっかり役者が入れ替わってしまった名鉄電車を眺めながら、ゆっくりと歩く。
歩く道は旧東海道で、なかなか趣のある所だが、果たして当時の僕はそういうことを想いながら歩いたのだろうか。
電車が切通を行く。
こういう俯瞰場所があったという記憶はない。
パノラマスーパー、1000・1200系リニューアル編成だ。
(なお、今は名鉄ではパノラマスーパーは1200系と総称しているらしいが、僕の中ではやはり違和感があるため、1000・1200・1800と個別に呼ばせていただくことにする)
田圃が広がる、かつて撮影したであろう地点に着いた。
ここから小川沿いに山側へ移ったはずだが、その山側には巨大な名鉄工場が威容を見せる。
おりしも、パノラマスーパー1000・1200・1800、フルラインナップの編成がやってきた。
小さな鉄橋を行くパノラマスーパー1000。
その編成の1200と増結1800の連結部。
まだわずかしか花を咲かせぬ桜の向こうに、数を減らせているらしい6000系初期車、関西の私鉄ならばまだまだリニューアルして主力となって活躍している年ごろだ。
SR譲りの大きな連続窓と紅い車体。
名鉄はこうでなくっちゃ。。。
6500系の急行。
紅い電車であるならば、もうそれで今の僕には十分な名鉄の薫りだ。
舞木工場を外から覗くとパノラマカーが保存されているのが見えた。
こちらは7001号、なかなか、関西在住の名鉄ファンは公開などに来るチャンスがなく、中で見せてほしいが難しかろう。
こちらは7002、僕らが最後にパノラマカーに会った頃のイメージで保存されている。
工場の裏手から藤川駅の方へ歩いてみた。
やや位置関係は西にずれるが、このイメージ、かつてのこの場所そのものだ。
電車はパノラマスーパー1000のリニューアル車。
ここに来てやっと記憶がよみがえってきた。
あの頃、本当にたくさんのパノラマカーがここを走っていた・・
今、この1000系はすでに両数が製造時の3割ほどしか残らず、ここにもかつてのパノラマカーのように、いくらでもやってくる・・イメージではないようだ。
かわりによく見るのがこの電車。
紅い、きれいなラインを見せる名鉄らしい通勤電車、3500系シリーズだ。
ここで線路の反対方向に移ってみる。
3100・3500系による急行電車。
6連の紅い電車が巨大な工場を背景に行く。
まだこのような電車が走っていたころ・・その頃を懐かしむだけ僕も老いたということだ。
800形の荷物電車。
3500形の普通電車。
今、わが世の春を謳う3500系の大先輩だ。
記憶は消えていく。
写真もまたある程度の技術をもって復元しないと、ひと様にお見せできない。
それほど時間がたってしまったということを実感した春の一日だった。