中京競馬場にあるらしいという噂は以前から伺っていたが、この春、友人たちが先に訪問したことで、僕自身も是非にも見に行きたくなった。
ちょうど別の友人から近鉄のチケットを譲ってもらい、特急はもったいないので、近鉄の急行乗り継ぎ、ちょうどJRの快速乗り継ぎと似た感覚で名古屋を訪問した。
その前に‥
僕が2002年に名古屋を訪問し、最後にパノラマカーに会った時の写真を‥
場所は知立駅だと思う。
この時はパノラマカーを求めて名鉄各線をさまよい、やっと、これが最後と運を天に任せ、この後は刈谷からJR快速で帰らねばならない時だった。
やってきたパノラマカー、あれほどたくさんいたこの系列も、ほとんど見ることができないほどに減少していたその時代の流れを知ることになった。
7039F、岐阜側7040、白帯車だが運用は普通列車だった。

7040のサイド、あまりにも美しい連続窓に深紅の車体。

7039、これが僕自身が見た最後のパノラマカー、営業線での雄姿だ。

この時は7700系も来てくれた。
7000に比すとまだ、急行などにも活用されていた。

こちらも、すでに鬼籍に入った8800系パノラマDX・・

どういうものか、同じSRの先輩、5500系はパノラマカーよりは活用されて、この訪問でも乗車もできた。

高運転台の車両も健在だった。

さて、中京競馬場のパノラマカーだが、7000系、白帯にならなかった7027Fだ。
競馬場の一番奥、家族連れのための公園のようなところで、のんびりと3両の電車が家族連れに囲まれて鎮座していた。
7028が一番手前にあった。
正面下部。
切り替え式の尾灯・種別灯、その脇にあるのはショックアブソーバで、中には油圧式のダンパが入っており、ちょうど、この高さがダンプトラックのシャーシ位置に当たるそうで…
踏切でダンプに突っ込んでも電車の乗客は守るという思想だとか。
左ライトケース。
こちら右。
台車。
初めて乗車した時、ガチャガチャと激しい騒音と揺れに驚いたものだ。
のちの線路改良で乗り心地もずいぶん改善されていた。
車掌台を外から。
まさか、車掌を二階運転台に乗せるわけにもいかず、客室の最後部にオープンな車掌台を作った。
その部分の客室、なお、向かって左には床沖クーラーが設置されているが、これは車両本来のクーラーは普通の電圧では使えないためだと思う。
戸袋部分がロングシートなのも名鉄らしい設計。
車掌台、独特の幅広、両引き貫通ドアの脇、簡単な逆さ向きのマスコンと車掌弁、ドアスイッチがある。
なお、車掌台として使わないときは、この部分は普通の座席になる。
車掌台の操作部分のアップ。
当時から名鉄は各車両にも車掌スイッチを設けていて、車掌は一か所にとどまらず、車内を歩き回って補充券発行をしていた。
それゆえか、この場所に長くいることはないという簡便な設計だ。
後部より、この車両の室内。
最前部が展望席、簡易な転換クロスが並ぶ。
小田急のNSEと比較される名鉄7000だが、あちらが有料特急用だったのにたいし、こちらは通勤輸送も考慮した一般用途。
天井。
シンプルなつくりではある。
窓柱。
前面展望式とともにパノラマカー最大の特徴がこちら。
製造時はカーテンバンドの止金具は室内を向いていて、せっかくの大胆な設計の連続窓が室内からではよくわからなかった。
のちの更新時にカーテンバンド止金具の位置が変更されている。
展望席から後ろの車内を見る。
昭和30年代に固定窓、エアコン完備、転換クロス装備の通勤車両というのはあまりにも先取りしすぎ感があり、国鉄が雰囲気だけでも名鉄に匹敵する一般車両を作り上げたのは、昭和50年のキハ66・67というのだから名鉄の先進性は凄まじい。
展望席。
先頭車の全長は展望席分だけ中間車より長いが、ラッシュにはここも有効活用されていた。
転換クロスのひじ掛け。
緊張感とゆとりを共存させたいいデザインだと思う。
展望席最前列の左。
つい、前に足を乗せたくなってしまう。
同じく最前列の右。
明るく、開放的なつくりだが、ここに収まるのがショックアブソーバだと聞くと、また違った感覚に陥りそうだ。
運転台下部が室内にはみ出している様子を展望室から見上げる。
その左脇、運転台への冷気取り入れ口だろうか。
右脇。
中間車は室内の設備が撤去され、イベントに使えるように改造されているので、反対側の先頭車両、7027へ・・
正面。
サイド。
サイドをやや後ろから。
運転室への梯子がある。
フロントアイとヘッドライト。
連続窓、昭和30年代にこういう美しい処理を考えた人はどんな人なのだろうか。
運転台。
この日は係のお嬢さんがいて、運転台の見学をさせてくれるとのこと、小さなお子さんに交じって並ばせてもらい、撮影した。
助手側。
運転台は思ったより広く、自家用車のような姿勢でリラックスできそうだが、出入りがややきつい。
運転台後ろには非常脱出口のパンタグラフ式による精巧な作りが見える。
客室内。
もういちど、あの楽しかったパノラマカーに乗りたいと強く思う。
叶う夢ではないが。
展望席。
車番の貼ってある、ふたのようなところが運転席からの非常用出口。
できれば、あの白帯車や高速設計の7500、貫通型7700も残してほしかった。
子供たちから見れば、信じられないかっこいい電車・・
大人たちから見れば、昔は普通に乗れた電車。
でも、その強烈な個性ゆえに、一度この電車を見た人の脳裏に深く刻まれる不思議な電車。
名鉄パノラマカー・・・
もう、二度と出てこないだろう、日本の電車の頂点のような存在。
写真は平成に入ったばかりのころ、河和線での7500系サイドビュー。

憧れ、そして会いに来てしまう不思議な電車。
名鉄パノラマカーよ、永遠なれ。
